夜勤スタッフの離職率を下げる“夜間保育”の導入メリットと課題とは?
導入メリットは、「子育て中職員の離職防止」、「採用力UP」、「ワークライフバランス改善」等が挙げられます。
また、夜間保育の課題は、「コスト負担」、「保育士採用難」、「安全管理」等が挙げられます。
目 次
- 1. なぜ“夜間保育”が注目されているのか?
- 1-1. 多様な勤務形態と子育ての両立
- 1-2. 特に医療・福祉・製造業では深刻な課題に
- 1-3. 施設側の採用・定着にも影響
- 2. 夜間保育とはどんな仕組み?
- 2-1. 昼間の保育園との違い
- 2-2. 対象となる子どもや運用方法
- 2-3. 主に活用される2つのパターン
- 3. 夜間保育を導入するメリット
- 3-1. 夜勤職員の離職防止・職場定着に直結
- 3-2. 採用広報時の“訴求ポイント”になる
- 3-3. 保護者間の口コミや職場の雰囲気向上
- 4. 夜間保育を導入する際の課題と注意点
- 4-1. 法的な要件や自治体ごとの届出
- 4-2. 人員配置や安全管理の難しさ
- 4-3. 利用者数の見込みとコストの見極め
- 4-4. 防犯・セキュリティー対策の強化が必須
- 5. 自院・自社で抱えるか、外部に委託するか?
- 5-1. 自院・自社運営のメリットと限界
- 5-2. 外部委託による運営のメリット
- 5-3. 委託によってコストパフォーマンスを高める
- 6. 夜間保育導入の検討をはじめる前に
- 6-1. 現職員のニーズ・実態のヒアリングが第一歩
- 7. まとめ|“夜間保育”は人材定着と職員満足の起点に
- 8. 保育園運営の専門家に無料で相談
なぜ"夜間保育"が注目されているのか?
多様な勤務形態と子育ての両立
医療・介護現場では、「高齢化の進行」、「医療の24時間化」、「在宅医療・訪問介護の拡大」、「人材不足によるシフト拡大」等の理由で夜間・準夜勤務が増加傾向にあります。
そのため、勤務時間が固定的・長時間・予測困難で、育児の予定に合わせにくく、子育てとの両立が困難です。
特に医療・福祉・製造業では深刻な課題に
医療・福祉・製造業などの業界では、24時間体制での業務が求められるため、夜勤スタッフの確保が重要な課題です。
しかし、夜勤スタッフの離職率は高くなっています。要因としては、「健康・生活リズムへの負担」、「精神的ストレス」、「労働条件・待遇面の課題」、「職場環境の問題」、「家庭・私生活との両立困難」等が挙げられます。
また、保育園や幼稚園の受け入れ不足や夜間・延長保育・病児保育の不足により、預け先が見つからず、突発的に休まざるを得ない日が続き、最終的に退職するケースもあります。
「子どもを預けられないから退職」という現実が実際に存在し、優秀な人材の流出を招いています。
施設側の採用・定着にも影響
「預け先があるか」は求職者の応募判断にも大きく影響し、夜間保育の有無が採用活動の成否を左右することも少なくありません。
特に医療・介護等の専門分野では、夜間保育の充実が職場選択の重要な基準となっています。
夜間保育とはどんな仕組み?
昼間の保育園との違い
夜間保育は、通常の保育園とは異なる運営形態を持っています。
主な違いは以下のとおりです。
保育時間:18時以降〜翌朝までの時間帯をカバー
対象者:夜勤・夕方〜深夜勤務の保護者が主な利用者
目的:夜間勤務や不規則勤務の家庭の支援
配置基準:保育士の配置基準や体制が昼間の保育園と異なる
人員体制:常時最低2名以上の保育士配置が必要
夜間保育では、子どもたちの睡眠時間や食事時間も通常とは異なるため、保育職員には昼間とは違った専門的なスキルと知識が求められます。
対象となる子どもや運用方法
多くの場合、産休明けの0歳児~小学校就学前(6歳児)までで、院内保育園の場合には、その病院に勤務する医療従事者が優先・対象です。
一時保育としての利用ケースもありますが、その運営には保育スタッフの夜勤対応や人件費の課題も伴います。
導入状況や利用の可否は、保育園へ直接問い合わせるのが確実です。
事前に見学や相談を行い、園の方針や保育内容を十分に理解しましょう。
主に活用される2つのパターン
■24時間型保育(夜間保育園)
厚生労働省が定義する「夜間保育事業」のひとつ。
開所時間が昼夜を通して設定されており、必要に応じて深夜や早朝も利用可能。
対象:夜勤・交代制勤務・シフト制などで日中に子どもを預けられない保護者。
特徴:夜間(おおむね午後10時以降)も保育スタッフが常駐。
睡眠・食事・お風呂など、生活全般を含めた保育を行う。
登園・降園の時間帯が幅広く設定可能。
メリット:保護者の勤務時間に柔軟対応可能。
長期的に夜間利用する家庭にも対応。
注意点:保育士のシフト確保が必要。
施設基準や安全管理体制が厳格。
■延長保育型の夜間対応
基本は日中型保育所(通常 7:00〜18:00程度)だが、延長保育時間を夜間まで拡大して対応。
対象:通常の保育終了後〜22時頃までの保護者の勤務延長や残業対応。
特徴:完全な24時間開所ではない。
夜勤や深夜勤務そのものには対応しにくい(深夜0時〜早朝は休園)。
メリット:昼間の利用がメインで、ときどき夜間が必要な家庭に適している。
施設運営の負担は24時間型より小さい。
注意点:最終預かり時間は自治体ルールで制限される(多くは21〜22時)。
保育職員の延長勤務シフトが必要。
夜間保育を導入するメリット
夜勤職員の離職防止・職場定着に直結
夜間も安心して子どもを預けられる環境は、求職者にとって大きな魅力です。
特に、看護師や医療技術職の採用競争力が高まり、長期的な人材確保にも有効です。
福利厚生の一環としての夜間保育は、「職員満足度の向上」、「職員のストレス軽減」、「定着率の向上」等に寄与します。
採用広報時の"訴求ポイント"になる
求人広告や採用面接において、「夜間保育完備」は大きな差別化要素となり、ほかの医療機関や企業との競争で優位に立つことができます。
特に医療現場の場合は、24時間体制で動いており、夜勤や遅番勤務は避けられません。
夜間保育を導入することで、勤務時間と保育時間のミスマッチを解消し、育児中の職員が安心して夜勤に入れる環境を整えられます。
これにより、育児とキャリアの両立が可能になり、離職防止にもつながります。
女性のキャリア継続支援において有効です。
保護者間の口コミや職場の雰囲気向上
「家族にやさしい職場づくり」が職員満足度UPにつながることは言うまでもありません。
家族にやさしい職場とは、単に子育て支援制度があるだけでなく、職員の生活スタイルや家庭事情を理解し、それに配慮した働き方を提供する職場のことです。
このような職場環境は、「あの病院は夜間保育があるから安心」「子育てしながらでも働きやすい」といった口コミとなり、SNSや地域のママ友ネットワークを通じて瞬く間に広がります。
実際に夜間保育を利用した職員の体験談や感謝の声は、ほかの求職者にとって何よりも説得力のある情報となります。
また、夜間保育の導入により職場への愛着度が向上し、子育て中の職員だけでなく、将来的に子どもを持つ可能性のある若い職員にとっても「ここなら長く働き続けられる」という安心感を与えることができます。
夜間保育を導入する際の課題と注意点
法的な要件や自治体ごとの届出
法的な要件や自治体ごとの届出等は以下のとおりです。
■届出義務
認可外保育施設を開設する場合、事業開始から1か月以内に自治体(都道府県知事または指定都市・中核市の市長)への届出が必要です。
届出対象には、夜間保育施設(例:午後8時~午前7時の時間帯)も含まれます。
■施設運営基準
認可外保育施設指導監督基準に適合している必要があります。
(1) 設備・環境:保育室の面積(子ども1人あたり1.65㎡以上が目安)、換気・衛生・防災などの確保
(2) 職員配置:保育職員またはこれに準ずる者を適正に配置(子どもの人数に応じて、少なくとも2名以上を常時配置(うち1名は保育士またはそれに準ずる者)
(3)保育内容:年齢や発達に応じた保育を行うこと。虐待防止、子どもの権利尊重を徹底すること。
(4)健康・安全管理:毎日の健康観察、感染症対策、緊急時の対応体制(避難訓練・119通報体制など)
人員配置や安全管理の難しさ
夜間に開所する園には以下のような追加基準が求められます。
(1)職員配置:子どもの人数に応じて、少なくとも2名以上を常時配置(うち1名は保育士またはそれに準ずる者)
(2)就寝中の見守り:定期的な巡視、体調・呼吸確認を行うこと
(3)緊急時対応:夜間でも即時に通報・連絡できる体制(電話・インターホン等)を整備すること
(4)安全管理:防火・避難計画、夜間出入口の施錠・防犯体制の整備が必要
(5)休憩体制:職員が同時に休憩・仮眠を取らず、常時見守りできること
利用者数の見込みとコストの見極め
夜間保育は基本的に福利厚生の一環として導入されるため、多くの設置者は収益性よりも「雇用確保」「人材定着」を最優先に考えています。
しかし、無駄な経費は極力抑えたいというのが設置者の本音です。
重要なのは、実際にどれだけの職員が利用するかを正確に把握することです。
過大な見積もりで必要以上に大きな園を作ったり、過剰な人員配置をしてしまうと、福利厚生とはいえ経営を圧迫する要因となります。
逆に、需要を過小評価して園の規模を小さくしすぎると、利用したい職員が利用できず、本来の目的である「雇用確保」「離職防止」の効果を十分に発揮することができません。
そのため、事前の職員アンケートや個別ヒアリングを通じて、実際の利用見込み数を慎重に調査し、それに基づいた適正規模での運営計画を立てることが重要です。
段階的な拡張が可能な設計にしておくことで、将来的な需要変動にも柔軟に対応できます。
防犯・セキュリティー対策の強化が必須
夜間保育では、昼間に比べて犯罪・侵入・災害などのリスクが高くなるため、「防犯・セキュリティー対策の強化」は非常に重要です。
1.出入口の管理・施錠
・夜間は出入口を常時施錠し、関係者以外が入れないようにする。
・送迎時のみ解錠し、職員が必ず立ち会って対応する。
・不審者が侵入しにくいよう、オートロックやモニター付きインターホンを設置する。
・出入口や窓の鍵の点検・管理を毎日実施し、点検簿に記録することが望ましい。
2.監視・記録体制の整備
・防犯カメラ(監視カメラ)を設置し、出入口・駐輪場・外周を常時録画する。
・録画データは一定期間(例:1か月程度)保管し、外部漏えい防止を徹底。
・夜間照明(センサーライト等)を設置し、暗所をつくらない。
※カメラは「抑止効果+記録証拠」として有効、プライバシー保護の観点から、保育室内では必要最小限に留めることが求められます。
3.非常時対応体制の整備
・警備会社や警察との連携体制を明確にし、非常通報装置を設置。
・不審者・侵入者発生時には、ワンタッチで通報できる警報システム(非常ボタン等)を導入。
・避難経路図・防犯マニュアルを夜間職員も熟知しておく。
・職員が少ない夜間帯でも、緊急時に複数人で対応できるシフト体制を整える。
4.職員教育と訓練
・夜間勤務職員向けに、防犯・避難訓練を定期的(年2回以上)実施。
・不審者対応、火災・地震・侵入時の避難誘導などをロールプレイ形式で行う。
・子どもを守るための「避難先(安全ルート)」を全員が共有しておく。
※ 昼間勤務者と夜間勤務者が別の場合も、「夜間用マニュアル」を整備して引継ぎ・共有することが重要です。
5.保育環境・外周の安全確保
・フェンスや門扉の高さ・強度を十分に確保(簡単に乗り越えられない構造)。
・駐車場・駐輪場に防犯灯やカメラを設置し、暗がりをなくす。
・外部から子どもの姿が見えにくいよう、カーテンやブラインドを使用。
・外壁・植栽の死角をなくし、侵入経路となる箇所を定期点検。
自院・自社で抱えるか、外部に委託するか?
自院・自社運営のメリットと限界
自院・自社運営は一見すると理想的に思えますが、実際には多くの複雑な課題が潜んでいます。
【メリット】
・完全なカスタマイズが可能:開園時間、保育方針、食事内容、行事計画など、すべてを自院・自社の判断で決定でき、職員のニーズに最大限応えた運営が可能
・即座の対応力:職員からの要望や緊急時の対応を、外部との調整なしに迅速に実行できる
・組織での一体感:病院や企業の理念と保育方針を統一でき、職員にとって違和感のない環境を提供
・コスト透明性:すべての費用が自社管理のため、どこに、どれだけの、コストがかかっているかを正確に把握可能
【ハード面のデメリット】
・施設基準への対応:認可外保育施設の基準クリア、安全設備の設置、定期的な設備メンテナンスなど、専門知識が必要
・法令遵守の責任:保育に関する法改正への対応、労働基準法の遵守、事故防止対策など、すべての責任を負う
【ソフト面のデメリット】
・専門職人材の確保難:保育士、栄養士、調理師、看護師など多職種の採用・教育が必要で、特に夜間対応可能な人材確保は非常に困難
・保育ノウハウの不足:年齢別の保育プログラム作成、子どもの発達に応じた対応、保護者との関係構築など、専門的な保育スキルの蓄積に時間がかかる
・職員のメンタルケア:夜間保育に従事する保育士の精神的負担は大きく、適切なサポート体制やローテーション管理が必要だが、経験不足により対応が後手に回りがち
・緊急時対応の未熟さ:子どもの急病、事故、災害時などの対応マニュアル作成や訓練実施に関する知識、事故・災害時などの対応マニュアル作成や訓練実施に関する知識・経験不足
・保育の質の維持:保育士間での保育方針の統一、継続的な研修実施、保育内容の改善など、質の向上に向けた取り組みが自己流になりがち
・人事管理の複雑さ:保育士特有の労働条件(夜勤手当、有給取得、産休育休など)への対応や、離職防止のための職場環境づくりに関するノウハウ不足
外部委託による運営のメリット
外部委託による運営のメリットとして、専門の委託業者は、夜間保育に関する豊富な経験と実績を持っており、安全管理や緊急時対応についても十分な体制を整えています。
また、保育職員の確保や研修、法令対応なども一括して任せることができます。
委託によってコストパフォーマンスを高める
委託業者は複数の園を運営することでスケールメリットを活かし、コストの最適化を図ることができます。
特に保育職員の確保においては、複数園での異動や応援体制、キャリアアップの機会提供などにより、単独園では難しい人材確保・定着を実現できます。
さらに、保育職員のネットワークや人材紹介ルートも豊富で、急な欠員が生じた場合でも迅速な補充が可能です。
これにより、自院・自社運営よりも効率的で安定した運営が期待できます。
夜間保育導入の検討をはじめる前に
現職員のニーズ・実態のヒアリングが第一歩
夜勤者の家族構成や困りごとを把握することはとても重要です。
これを事前に整理しておくと、「本当に必要な夜間保育の形」が見えてきます。
夜勤者からよく挙がる課題は、
(1)預け先がない
・夜間(19時以降〜翌朝)まで開いている保育園がない
・一時的・突発的な夜勤対応が難しい
(2)送迎の難しさ
・公共交通機関が少ない時間帯
・自家用車があっても子どもを起こして移動させる負担
(3)子どもの生活リズムへの影響
・夜間保育利用で睡眠時間が不規則になりやすい
(4)費用負担
・夜間料金の高さ、補助制度の不足(通常保育の1.5〜2倍が相場)
(5)安全面・安心感
・夜間に子どもを預ける不安(職員体制、防犯対策)
(6)保育の質
・単なる見守りでなく、情緒的なケアも求められる
(7)夜勤明けの対応
・朝まで預けても、自分が睡眠を取る間の昼間保育がない
これらの課題を具体的に把握することで、導入すべき夜間保育の運営形態(24時間型 or 延長型)や、必要な付帯サービス(送迎、食事、入浴など)が明確になります。
また、職員のニーズに合致した制度設計により、より高い利用率と満足度を実現できるのです。
まとめ|"夜間保育"は人材定着と職員満足の起点に
求職者や取引先、自治体からの好感度が上がり、「子育てに優しい病院・企業」という印象を与えることが期待でき、働き方改革推進にもつながります。
専門性の確保、運営の安定性、コストと効率の最適化、保護者の安心感の観点から、「夜間保育も運営委託」という選択肢を検討することがおすすめです。
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