保育園の直営運営から委託への切り替え完全ガイド|移行時に押さえるべき実務と注意点
直営から委託への切り替えは、園の体制を見直す大きな決断です。
採用難や労務負荷を解消する手段となりますが、成功には慎重な判断が不可欠です。
本記事では、移行前に確認すべき点や注意点を整理し、失敗しない準備の進め方を解説します。
目 次
- 1. なぜ今、直営から委託への切り替えが増えているのか
- 1-1. 人件費の高騰と採用難が深刻化
- 1-2. 運営の属人化リスク
- 1-3. 管理業務の煩雑化
- 2. 切り替えを検討する前に確認すべき3つのステップ
- 2-1. 現状把握:自園の課題を数値化する
- 2-2. 委託範囲の整理
- 2-3. 関係者への共有と合意形成
- 3. 委託移行時によくあるトラブルと注意点
- 3-1. 移行スケジュールの遅延
- 3-2. 保育士の引き継ぎ不足
- 3-3. 保護者様への説明不足
- 3-4. 契約内容の曖昧さ
- 4. 委託化を成功させるための実務プロセス
- 4-1. STEP(1) 現行業務の棚卸し
- 4-2. STEP(2) 事業者選定のポイント
- 4-3. STEP(3) 移行スケジュール策定
- 5. 委託化によって得られる主な効果
- 5-1. 採用/人材管理の安定化
- 5-2. 品質/安全管理の標準化
- 5-3. 保育品質の向上と保護者満足度の改善
- 6. 委託会社と良好な関係を築くために
- 6-1. 定例ミーティングと情報共有の仕組み化
- 6-2. トラブル対応の窓口を一本化
- 6-3. 定期レビューと改善提案を受けとめる姿勢
- 7. 委託検討中の病院/企業担当者へ
- 7-1. 移行を「終わり」ではなく「始まり」と捉える
- 7-2. 現状分析→相談→実行の3ステップが基本
- 8. まとめ|「任せる」から「共に運営する」へ
- 8-1. 委託の成功は“共同意識”と“明確な仕組み”から
- 8-2. 現状を可視化し、信頼できるパートナー選びを
- 8-3. 今こそ、直営の課題を見直し持続可能な運営へ
- 9. 保育園運営の専門家に無料で相談
なぜ今、直営から委託への切り替えが増えているのか
人件費の高騰と採用難が深刻化
保育士の採用環境は年々厳しさを増しており、求人を出しても応募が集まりにくい状況が続いています。
こども家庭庁の最新データによると、保育士の有効求人倍率は3.78倍(2025年1月時点)で推移しており、これは全職種平均(1.34倍)を大きく上回る深刻な売り手市場であることを示しています 。
一方で、給与や処遇をある程度引き上げなければ人材が集まらず、直営側の人件費負担は増えるというジレンマを抱えがちです。
委託では、複数園を運営する事業者が採用・配置を一括して行うことで、人材プールを広く持ち、欠員時にも横の連携でカバーしやすいというメリットがあります。
運営の属人化リスク
直営では「園長不在で判断が止まる」「請求・監査対応が特定の人しかできない」といった業務のブラックボックス化が生じる可能性が大きいです。
担当者が欠ければ、運営停止のリスクもあります。
委託への切り替えは、これを「仕組み」で解決するチャンスです。
全国の運営ノウハウを凝縮したマニュアルや体系的な研修により、個人の経験に頼らない体制を構築し、職員の入れ替わりに左右されず、常に最新の安全基準に基づいた高品質な運営を維持できます。
管理業務の煩雑化
保育園運営には、シフト管理や自治体等へのさまざまな報告、厳格な監査対応など、膨大な「見えない業務」が伴います。
本業の傍らこれらをこなす場合、管理者のリソースの3割〜5割が事務作業に削られることも珍しくありません。
委託に切り替えることで、最新の法令に基づいたマニュアル運用や労務管理を専門家へ一任できます。
設置者は煩雑な実務から解放され、医療や企業経営といった本来のメイン事業に100%集中できる環境を構築できるのが最大の強みです。
切り替えを検討する前に確認すべき3つのステップ
現状把握:自園の課題を数値化する
まずは現状を数値化し、直営の限界を客観視します。
内閣府の公定価格やWAM(福祉医療機構)の調査では、人件費率70〜75%が適正運営の目安とされます。
これを超える場合は経営の圧迫を意味します。
また、厚労省の調査による保育士の離職率は約9〜10%と全産業平均(約15%)より低値ですが、実際は他業界への流出(潜在保育士化)による「深刻な採用難」が現場を疲弊させています。
こうした公的な指標と自園の数値を比較することで、解決すべき課題が明確になります。
委託範囲の整理
次に「委託範囲」を具体化します。すべてを任せるのが正解とは限りません。
●採用だけ委託するのか
●保育運営全体を任せるのか
●労務管理や自治体対応まで含めて任せるのか
●給食・清掃などの周辺業務も含めるのか
といった一部委託も可能です。
事前に「任せる範囲」を明確に言語化しておくことで、その後の事業者選定がスムーズになり、ミスマッチのない安定した運営体制を構築できます。
関係者への共有と合意形成
直営から委託への切り替えは、「委託=リストラ」「外部に売却されるのでは」といった不安を抱きやすい大きな変化です。
こうした誤解を防ぐため、早い段階で「委託を検討する背景(人手不足、安定運営の必要性など)」「職員の雇用や待遇をどう考えているか」という背景を共有しましょう。
特に、現職員の雇用継続や給与水準、園独自のこだわりをどう守るかを明確に伝えることが不可欠です。
委託は「園を存続させるための前向きな選択」であるという共通認識を持つことが、円滑な移行の鍵となります。
委託移行時によくあるトラブルと注意点
移行スケジュールの遅延
移行スケジュールを甘く見積もると、病院や企業などの設置者側に直接クレームが集中する事態を招きます。
最低でも3〜6か月の準備期間が必要です。
ここを短縮しすぎると、運営開始までに人員が揃わない、自治体への届出が間に合わない、といった致命的な不手際が生じます。
また「なぜ変えるのか」「もっと早く知りたかった」という保護者様への説明が直前になると、不信感は一気に高まります。
重要な工程を明確にし、早めに対策を打つことで、運営後のトラブルの芽を確実に摘んでおくことが重要です。
保育士の引き継ぎ不足
直営から委託への切り替えで最も危ういのが、現場の「暗黙知」の消失です。
「園児一人ひとりの情報」「保護者様との関係性や過去の要望・クレーム」「日々の運営のクセや工夫」など、マニュアル化しにくい重要情報が共有されないと、保護者様の信頼を損なう原因となります。
対策として、個別の配慮事項をまとめた「引継ぎマニュアル」の作成に加え、現職員に継続して勤務していただくための施策を講ずることが重要です。
保護者様への説明不足
運営体制の変更は、わが子の生活に直結する保護者様にとっての死活問題です。
形式的な通知のみでは「なぜ委託にするのか」「保育の質は本当に大丈夫か」という不信感を生み、ネガティブな口コミを招きます。
対策として、開園時間や料金、保育方針といった情報を明示した資料を作成し、説明会等で対話を尽くしましょう。
単なる経営事情の伝達ではなく、「専門性の導入で保育をアップデートする」というポジティブな意図を共有し、信頼関係を守ることが不可欠です。
契約内容の曖昧さ
「ここまではやってくれると思っていた」という認識のズレは、運営開始後のトラブルや予期せぬ追加費用の原因になります。
例えば、「急な欠員時の費用」や「行事に伴う延長対応」が委託料に含まれるのか、別途請求なのか。
こうした責任分界点を「業務分担表」で明文化しましょう。
「言った・言わない」を防ぐため、追加費用の発生条件を事前に合意し、文書を残しましょう。
この契約段階での詰めが、健全なパートナーシップを築く鍵となります。
委託化を成功させるための実務プロセス
STEP(1) 現行業務の棚卸し
委託化を成功させる鍵は、現場の「属人化」を解消することです。
まず、行事や送迎、シフト作成、監査対応など、全業務を「時間・頻度・担当者」で一覧化しましょう。
特に自園独自の特殊ルール(夜勤帯シフト等)を徹底的に「見える化」しておくことで、見積もり精度が劇的に向上します。
現状を正しく数値化して伝えることが、運営開始後の「想定外の追加費用」を防ぐ重要な手段です。
STEP(2) 事業者選定のポイント
選定の際は金額だけでなく「組織の厚み」を評価しましょう。
安さだけで選ぶと、緊急時の対応遅滞や採用難を招くリスクがあります。
広域なリソースに基づく応援体制や、採用・給食等の「多角的な支援」があるかを確認してください。
複数名での担当制など、本部サポートの充実度が、安定した運営と迅速なトラブル解決を支える最大の鍵となります。
結果として、この「組織力」が安心感に直結します。
STEP(3) 移行スケジュール策定
スケジュール策定で最も重要なのは「伝える順番」です。
まず現職員への丁寧な説明と意向確認を行い、雇用継続の目途を立てます。
並行して、委託会社の知見を活かし、備品やICT環境の「現状点検」を行いましょう。
これらを反映した契約締結を経てから保護者説明会を行うことで、「職員は残る」「環境も良くなる」という確かな安心を届けられ、スムーズな移行が可能になります。
委託化によって得られる主な効果
採用/人材管理の安定化
委託化により、個々の園では難しい「組織的な人材管理」が可能になります。
全国規模の運営実績から蓄積された「地域ごとの採用ノウハウ」を活用することで、募集効率が向上します。
また、急な欠員時には近隣園からのヘルプ調整といった組織ならではのバックアップが機能します。
客観的な視点でのシフト管理や労務改善も加わることで、職員の負担が軽減され、安定した継続雇用へと繋がっていきます。
品質/安全管理の標準化
委託の大きな強みは、全国の園で集まった事例を「安全の仕組み」に変えられる点です。
他園で起きたヒヤリハットを即座に自園の対策に反映する「再発防止サイクル」や、月1回の巡回による衛生チェックなど、一定水準の安全管理が標準化されます。
また、複雑な法改正やガイドラインの変更にも本部の専門部署が迅速に対応します。
現場の負担を抑えつつ、常に最新の基準で子どもたちの安全を守ることが可能になります。
保育品質の向上と保護者満足度の改善
委託による一つの効果として、人員配置の適正化、書類・事務作業の効率化もあげられることがあります。
それにより職員が「子どもと向き合う時間」を作ることができます。
事務作業の共通化や効率化により、1日あたりの事務業務を短縮でき、そこで生まれたゆとりが、送迎時の「今日あった成長の報告」という密なコミュニケーションに繋がります。
職員がゆとりを持って接することで、保護者様の安心感は飛躍的に高まり、「選ばれる園」としての好循環が生まれます。
委託会社と良好な関係を築くために
定例ミーティングと情報共有の仕組み化
委託を成功させる秘訣は、委託会社を「外注先」ではなく「運営パートナー」と定義することです。
月1回の定例報告で、ヒヤリハットの共有や採用計画や行事等を協議し、課題を「自分事」として共有しましょう。
この密な連携が、不測の事態における迅速なレスポンスや質の高い提案を引き出し、結果として園の資産となります。
トラブル対応の窓口を一本化
緊急時の混乱を防ぐには、情報の窓口を一本化し、役割を明確にすることが不可欠です。
「委託会社の2名担当制」「緊急時の連絡フローの徹底」を行い、連絡の滞りを防ぎましょう。
行政や保護者様への説明は誰が担い、どの段階で設置者が判断を下すのか、このフローを事前に共有しておくことで、組織的な初動対応が可能になり、不測の事態においても園の信頼を最小限のダメージで守り抜くことができます。
定期レビューと改善提案を受けとめる姿勢
委託会社からの改善提案を、「今までと違うから」と拒むのではなく、
●なぜその提案が必要なのか
●自園の方針や文化にどう馴染ませていくか
を一緒に検討していく姿勢が大切です。
外部の視点を取り入れることで、「今までの当たり前」に潜んでいたリスクや非効率を解消し、保育の質と運営の安定性を一段上のレベルへと引き上げることができます。
委託検討中の病院/企業担当者へ
直営からの切り替えに不安を感じるのは、それだけ園を大切に思ってきた証です。
その想いを守りつつ、属人化していた採用や労務を「組織の力」で支える体制へ。
抱え込まず、理想の園を共につくるパートナーとして、私たち専門家を頼ってください。
移行を「終わり」ではなく「始まり」と捉える
委託化は直営の「終わり」ではなく、持続可能な運営へ踏み出す「新スタート」です。
これまで一社で抱えてきた採用や事故対応などの重圧を、専門事業者の知見と分散することで、「孤軍奮闘」から「組織的なチーム運営」へと進化できます。
人材確保や運営負担を一社だけで抱えるのではなく、専門事業者の力を借りながら、保育の場を守っていくための選択肢としてください。
現状分析→相談→実行の3ステップが基本
委託化の成功は「現状分析・相談・実行」の3ステップを丁寧に進めることから始まります。
1.現状を整理し、自園の課題と理想像を言語化する
2.複数の委託会社に相談し、提案内容や考え方を比較する
3.自園に合ったパートナーを選び、移行プロセスを丁寧に組む
というステップを踏むことで、納得感のある委託化につなげることができます。
まとめ|「任せる」から「共に運営する」へ
委託化の本質は「丸投げ」ではなく、理想の園を共につくるパートナー選びです。
まずは現状を可視化して課題を共有し、その上で「任せる範囲」と「残したい役割」を明確にしましょう。
委託会社とオープンに対話し、連携体制を一緒に設計していくことで、コスト削減を超えた「運営の安定」と「保育の質向上」が実現します。
自園にとって最良のパートナーと共に、納得感のある一歩を踏み出してください。
委託の成功は"共同意識"と"明確な仕組み"から
委託成功の鍵は、強固な「仕組み」と、共に園を創る「共同意識」にあります。
担当者一人に頼らず、組織的な仕組みを整えることで、属人化のリスクを排除できます。
さらに、月1回の定例会などで課題を自分事として共有し合うことで、一方的な発注関係ではない「真のパートナーシップ」が生まれ、それが保育の質と運営の安定に直結します。
現状を可視化し、信頼できるパートナー選びを
委託化を成功させるには、現状の可視化とパートナーの組織力評価が不可欠です。
まずは現状を正しく数値化しましょう。
その上で、担当者個人に依存しない組織かどうかを見極めます。
現状の課題を共有し、共に解決策を練るプロセスこそが、信頼できるパートナー選びの核心です。
今こそ、直営の課題を見直し持続可能な運営へ
保育ニーズが多様化する今、属人化した直営運営を見直す時期に来ています。
「あの人でなければ分からない」という状況を、標準化されたマニュアルで解消し、組織としての安定性を高めましょう。
専門家とタッグを組み、ICT活用による業務削減や安全性の向上を推進することは、単なる効率化ではありません。
10年先も子どもたちの居場所を守り続けるための、未来を見据えた「持続可能な選択」です。
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