第4回
子ども同士のトラブルが、子どもを育てます
目次
前回のコラムでは、「叱らない・怒らない」は、決して子どもを甘やかすことではなく、主体性を育むための大切な関わり方であることをお伝えしました。
今回は、その考え方をさらに一歩進めて、「子ども同士のケンカやトラブル」について考えてみたいと思います。
子どもたちが言い争ったり、おもちゃの取り合いをしたりすると、大人はつい「早く止めなければ」と思ってしまうものです。でも、子どもたちの世界を少しだけ信じて見守ってみると、そこには相手を理解し、自分の思いを伝え、折り合いをつけていくための、大切な学びの時間が流れています。
ケンカは、子どもたちが育つ「学びの時間」
子ども同士のケンカやトラブルを目にすると、「止めたほうがいいのかな」「早く仲裁に入らないと」と感じることはありませんか。
もちろん、相手を傷つけるような行為や危険な場面では、大人がすぐに介入することが必要です。しかし一方で、子ども同士の小さなすれ違いや意見のぶつかり合いは、実は大切な「育ちの機会」でもあります。
私たちは、子ども同士のトラブルを「困った出来事」ではなく、「子どもたちが社会性を学ぶチャンス」だと考えています。
「自分はどう感じたのか」「相手はどう思ったのか」「どう伝えたらよかったのか」「次はどうすればいいのか」。そんなことを考えながら、子どもたちは少しずつ、共感する力や言葉で伝える力、相手と折り合いをつける力を身につけていきます。
すぐに答えを出さず、まずは見守る
子ども同士のトラブルが起きると、大人はつい「どちらが悪いのか」を判断しようとしてしまいます。しかし、本当に大切なのは、子どもたち自身が相手の思いに気づき、自分たちなりに解決へ向かう経験を積むことです。
そのため、私たちはすぐには仲裁に入らず、まずは少し離れたところから見守ります。子どもたちの声が聞こえる場所にはいますが、できるだけ会話の主役は子どもたちに任せます。
もちろん、年齢や状況によっては大人が間に入る必要があります。特に乳児や、手が出てしまうような場面では、安全を最優先にしながら支援します。それでも、「大人がすべて解決してあげる」のではなく、「子どもたちが解決するための橋渡し役」でありたいと考えています。
子どもを信じるということ
こうした関わり方の土台にあるのは、「子どもには、自分たちで育っていく力がある」という信頼です。
子どもの成長は一直線ではありません。うまくできる日もあれば、同じことでつまずく日もあります。前に進んだと思ったら少し戻る、その繰り返しの中で、一人ひとりの力が育まれていきます。
だからこそ、大人が先回りして失敗を取り除きすぎるのではなく、子どもが自分で考え、悩み、乗り越える時間も大切にしたいのです。
大人は「裁判官」ではなく「伴走者」
トラブルの場面で、大人が「どっちが悪いの?」と結論を出す役割になる必要はありません。
大切なのは、それぞれの子どもの思いを受け止め、お互いの気持ちがすれ違っている部分を少しだけつないであげること。「本当はこう思っていたんだね」「お友だちはこんな気持ちだったみたいだよ」と、言葉にならない思いを橋渡しすることです。
子どもたちが主役であり、大人はその姿を信じて支える存在です。
ケンカやトラブルは、できれば避けたいものに思えるかもしれません。しかし、その一つひとつの経験の中に、子どもたちが人と関わりながら生きていくための大切な学びが詰まっています。
「早く解決しなければ」と焦るのではなく、ときには少しだけ立ち止まって見守ってみる。そんな大人のまなざしが、子どもたちの「自分で考え、相手とともに育つ力」を育んでいくのではないでしょうか。
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